iTeachers
教育ICTを通じて「新しい学び」を提案する教育者チーム
iTeachers:
The Other Side
〜イノベーターたちの素顔〜
iTeachersメンバーや、教育ICTの分野で活躍する先生たちの取り組みをレポートするWeb連載。iTeachersのマネージャー的存在である、ライターの神谷加代さんが、それぞれの教育現場を取材。保護者そして主婦の視点から、先生たちの素顔に迫ります。
小学生2人の母親。結婚を機にサンフランシスコに渡米し、10年の在米生活を経て2010年に帰国。その後、主婦ブロガーとして 「家庭×教育ICT」に関する話題をメインにした『主婦もゆく iPad一人歩記』を執筆。家庭や教育におけるICTのあり方を主婦目線で描き、教育関係者をはじめとする多くの読者から支持を得ている。現在は教育ICTの分野を中心にライターとして活動中。著書に『iPad教育活用 7つの秘訣』
主婦ブロガー/ライター
神谷 加代
Kamiya Kayo
<記事一覧>
第3回
袖ヶ浦高校 永野直先生 / 附属新潟小 片山敏郎先生 /玉川大学 小酒井正和先生 /
広尾学園 金子暁先生 / デジタルハリウッド 栗谷幸助先生 / 俊英館 小池幸司先生
iTeachersイベントレポート <前編>
「iTeachers × iStudents プレゼンLIVE
〜ICTで変わる“新しい学び”のアイデア〜」
2013年11月4日、東京都港区にある広尾学園で開催されたiTeachersイベント「iTeachers × iStudents プレゼンLIVE ~ICTで変わる“新しい学び”のアイデア~」。独自イベントとしては第3回目となった今回のイベントはiTeachersの先生だけでなく、iStudentsと銘打たれた現役の中・高・大学生の3人が招かれ彼らのプレゼンも発表されました。デジタルネイティブでICTが身近な彼らたち。「教育×ICT」について何をどう感じ、教育現場には何を求めているのか、会場には詰めかけた約100名の関係者らは、彼らの貴重な“生の声”に耳を傾けました。
広尾学園内にあるお洒落なカフェテリアで開かれた今回のイベント。洗練された雰囲気の中で、イベントのMCを務めて頂いたのはデジタルハリウッド大学の栗谷幸助先生と俊英館の小池幸司先生。いつもは、クリエイターを目指す個性的な学生に囲まれている栗谷先生と、iTeachersの個性的な先生たちのまとめ役となっている小池先生が、改めてiTeachersの経緯なんかを紹介するとともに軽快なトークで、会場の雰囲気を温めてくださいました。
セッション1のトップバッターは、千葉県立袖ヶ浦高校・情報コミュニケーション科の永野直先生。様々な事例を紹介しながら、教育現場のICT活用はそれを使った後がとても重要で、なかでも「学ぶ実感」と「コミュニケーションの活性化」につなげていくことが大切なのではないか、というお話がありました。
その一例として、見る人によって解釈が異なる動画がいくつか紹介されました。「ICTは映像が簡単に扱えてイメージで理解させやすいが、本当にそうなのか。動画によっては、自分の見たものが正解だと思い込んでしまうものもあり、他人が自分と違う解釈をしているかなんて話してみるまで分からない」そういうことから、ICTで映像が扱えたとしても、ICTで終わらないための工夫が必要で、「学ぶ実感」と「コミュニケーションの活性化」につながるような使い方をしていくことが大切なのではないかということです。
続いては、新潟大学教育学部附属新潟小学校の片山敏郎先生。なんと、来る時の新幹線でPCが壊れプレゼン資料が消えてしまうというハプニングに見舞われた片山先生は、持ち合わせの映像を駆使してプレゼンをしてくださいました。アドリブ満載のプレゼンには、かえって、普段の講演では聞けないような小学生たちの日常のエピソードや生の声が多く語られることとなり、笑いの絶えない楽しいプレゼンとなりました。
なかでも印象的だったのは、小学6年生にiPadを配った初日の出来事。この日は協働学習の一環で、届いたばかりのiPadを片手に街へ飛び出したそうですが、子供達はグループの役割分担を忘れて全員で写真撮影をしてしまったり、スタッフの人にインタビューしている最中なのにカメラの操作に夢中になってしまったりしたそうです。
また、地域の人にインタビューするものの伝え方がまずくて断られる場面もあるなど、ICTを活用した協働学習で子供達がどのような体験や失敗をしているのか、そんな内容を知ることができました。ですが、iPadを使って学習をしている子供達の映像からは、本当に楽しんでいる姿が伝わってきてとても好感でした。
セッション2では、「iTeachers × iStudents ICTで変わる新しい“学びのアイデア”」と題して、iStudentsからは現役の中・高・大学生が登場しました。普段、どのようにICTに接しているのか、また教育現場に求めることは何なのかなど、リアルな声が聞けるとあってイベント開始前から密かに関係者の注目が高かったこのセッション。iStudentsとiTeachersの先生が同じテーマでプレゼンすることで、ICTにまつわる様々な視点や価値観を伝え合おうという趣向であります。
iStudentsのトップバッターは青山学院大学社会情報学部3年の田熊友貴さん。自称「アイデアマン」の田熊さんは、ゼミで取り組んだ電子書籍で賞をとったり、学祭やインターン先でも企画したプロジェクトが表彰されるなど、人が思いつかないようなアイデアを考えるのが得意だということです。そんな田熊さんですが、アイデアは“既存の知識を組み合わせて作る”という自身の考えから、普段からスマホなどで積極的に情報収集をしているのだそうです。
ただ、なぜか以前に比べると、アイデアが出てこないと感じることも多くなったようで、そこに、自分の見ている情報が断片すぎることや、今の大学生がもっている、“情報は一方的に流れてくるもの”という感覚が影響しているのかもしれないと疑問を思ったそうです。
そこで、大学生がもっと深く考えることができるようになるためには、「調べる」ということをしなければいけないのではないかと。しかも「深く調べる」ことが必要ではないかということで、そのための手段として、ICTをもっと活用していきたいということです。また断片的な情報を自分のものに変えていくためには、ICTだけでは不十分で、「本」から体系的な知識を得たり、「人」とつながりながら様々な情報を得る必要があることも感じているとのこと。
田熊さん曰く、「よく年配の人が『若者の発想はすごい』などと言うが、自分たちからみれば大人が経験として持っているものにも凄さを感じる。大人にとって当たり前のことをもっと見せてほしい」ということで、若者に対して、ICTを使うことばかりが、“新しい学び”のスタイルではないということを教えられる内容でした。
続いて、iTeachersからは玉川大学の小酒井正和先生の登場。企業とのコラボなども積極的に行っている小酒井研究室では、企業人から「最近の学生は報・連・相を意識したやりとりができていない」という声を聞くことが多いそうです。そこで、同研究室では、研究に取り組みつつも、報連相の能力を高めることにも重点を置いていて、ICTもその部分でもっと効果的に使っていくような取り組みがされています。
その一例として、ブラザーシステムと呼ばれる連絡系統を作り、上級生から下級生へ連絡がスムーズに伝わるよう「サイボウズ」を利用しているとのこと。また、学生からの相談には「LINE」を使用し、学生が喋りやすい環境を作るなど配慮をされているようです。
というのも小酒井先生曰く、「どんなよいアプリやツールを使っても、先生側が相談しにくい雰囲気を作ってしまうとそのシステムそのものが機能しない」ということで、報連相やコミュニケーション能力を伸ばすためには、学生ばかりに求めるのではなく、受け入れる側の教師の姿勢も変えていかねばならない、という点を指摘されていました。学生の持っているICT感覚に合わせてあげる、“新しい学び”には、そのような視点が大切だということが印象的な発表でありました。
このような形で始まったセッション2。次は高校生の登場!というところで、前編のレポートはおしまいです。後編へつづく・・・
筆者KAYO の ひとりごと
「来るときの新幹線でPCが壊れプレゼン資料が消えてしまった片山先生。持ち合わせの映像だけで行われたアドリブ満載のプレゼンは、ある意味、スリル満点でした。
「世界一受けたい!親子iPad授業 〜iTeachers Special Live in Yokohama 〜」レポート
iTeachersカンファレンス 2014 Spring 〜教育ICT、成功への分岐点〜 (前編)
永野 / 片山 / 小酒井 /金子 / 栗谷 / 小池 先生
iTeachersイベントレポート<後編>
「iTeachers × iStudents プレゼンLIVE
〜ICTで変わる“新しい学び”のアイデア〜」
永野 / 片山 / 小酒井 /金子 / 栗谷 / 小池 先生
iTeachersイベントレポート<前編>
「iTeachers × iStudents プレゼンLIVE
〜ICTで変わる“新しい学び”のアイデア〜」